ユキエと祐介

「スポブラ」

太陽が味方してくれない暑い日だった。

体育館の中は、サウナのようで着ていたTシャツの袖を肩までまくった。
校舎から体育館へ向かう渡り廊下を顧問の藤井先生が歩いてくるのが見えた。
先生は猫背で猿顔。図書館で見たダーウィンの進化論の人間の一歩手前、クロマニョン人似。
体育館の入口に来ると、力強く笛を吹いた。
体育館中が一瞬静まり返った後、集合の合図に反応しバスケットシューズと床が擦れ合いキュッキュッと音が一斉に鳴り響き、入口に集まった。

中学校に入学をして、バスケットボール部に入部を決めた。理由は、一学年上の先輩が一人もいないということ。夏の大会では、三年生の先輩があっけなく負けてしまったものだから思った以上に一年生にて自分達の時代を迎えた。

その夏に自分の周りの景色が変わってきたことに気付いた。自分が他の人と違うと感じ恥かしかった。同じ部活に入った小学校からの友人と一緒にいても、何か違和感があり一人だけ取り残されてしまったような気持ちになるのだった。

一週間後、二週間後には見えるように世界が変わっていくのを感じた。

暑い夏が終わった時に女子バスケ部の中でブラジャーをつけていないのは私だけになった。

女子達の白いTシャツから透ける白いブラジャー姿は水族館で泳ぐ海月のように神秘的で神がかって素敵に見えた。

進化しそびれた自分の為に一大決心をして母にブラジャーをねだってみたが、
「どこに着けるの?」との一言だった。
私は胸がなかった。揺れる胸がなかった。隠す胸がなかった。ブラジャーの役割が発揮で物を供えていないことは分かっていた。進化しそびれたあの夏の話。

この小説は頑張っていれば奇跡が起きるというような夢物語ではない。けれど、地道にやり続けることや夢にしがみつくことで見えてくる未来を感じた。だから「祐介」に親近感を覚えるのだろう。

また「祐介」はあの頃の私と再会させてくれた。
誰にも話すことがなく、忘れてしまっていた一欠けらの自分を大切にしてあげようと思った。
そして、もっと頑張ろうと思った。

仲田 ゆきえ

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