「デビュー」
ブラジャーの余ったところから乳首が見えそうだ。
ハッと目が覚めた時にはそのような至福のシーンが、
頭の中でカタカタカタカタと文字化されて浮かび上がった。
目の前には女の子が寝ている。
どうやら激しく宅飲みをして、床にそのまま寝てしまったようだ。
頭がガンガンする。
まわりにはあとおそらく3人ほどいるはずである。
音を立てて女の子が目を覚めてしまわぬよう、首の筋肉が許す限り周囲を見回すと時間が見えた。
まだ5時。である。
始発もまだ動かない。
みんなもまだ寝ている。
ということであとはどう目の前の女の子の乳房を鑑賞しようかという時間になった。
まず一計は「うーん」と寝返りの振りをしてさらに近づくというパターンである。
女の子が目を覚まさぬように懐に入り込むよう、実施。
成功。である。
「うおおお」(小声)
近づきすぎて、寝息もかかってくる。
逆にこっちは息はとめっぱなしである。
ここまでくると男である。
キスがしたい。のである。
下手したらいままでの友情関係にも亀裂をいれてしまうかもしれない。
ただ、まだ半分頭も酔っていたこともあり、
脳内決議がおりた。
配置的にも他の3人はテーブルを挟んで向こう側、家の主はおそらく別のベッドで寝ているだろう。
即ち、死角。である。
キスの瞬間、寝顔のかわいさにも味を覚えた。
しばらく寝顔を見つめることにした。
数分後..
すると目の前の大天使がうっすらと目を開け、見つめ返してきたのである。
高まる鼓動。
自給自足で自分の口臭のチェックを、
口と鼻の両間で実施する。
見つめ合うふたり。
瞬きの音が今にも聞こえそうである。
しかし、不思議なことに次の瞬間には
キスをした。のである。
(「すまん、祐介、、!」)
と、心の中で謝りながら、
口の中では、甘くてたまらないものを舌先から全身で感じていた。
帰宅途中、
「これが大学生か。」
その男の口元はいつもに増してにやけていた。
大学デビューをしてはじめてできた友人の名が、
そういえば『祐介』であったのを、
この作品を読み、少し淡く酒臭い記憶とともに思い出したのである。
丸橋 俊介