リャンヨと祐介

「ごめんよ、カービィー」

子供の頃、毎日毎日ゲームをしてる、ゲーマーの弟に誘われて、スマッシュブラザーズという対戦ゲームをさせられていた。
弟はネスっていう帽子を後ろにかぶった男の子のキャラクター使いで、私は星のカービィーが好きでカービィー使いだった。

弟が「コンボ!」と言うと、そのまま身動きを取る隙もなくボコボコに殴られ続け、最後かかと落としのような技で、画面下に叩き落され殺されてしまうのだ。
私はしばらく無言になってしまう。お姉ちゃんだし、姉としての威厳を保ちたいと思うものの、マジ切れしてしまって言葉が出ない。
むしろ涙をこらえることに必死なくらいだ。
すると弟が気を使って「いや、姉ちゃん才能あるよ!」とか言って、私の機嫌を取ろうとするんだけど、それがまた余計に腹立だしかった。

そのくせ私は自主練をしなかった。してしまうと、私がまだ負けても冷静を保っていられる「経験不足」という理由を奪われてしまうから。
これはゲームだけじゃない、私の人生の基本スタンス。
これ以上くやしくなるのが耐えられなかったら、そこでやめてしまう。
頑張っても頑張ってないふりをし、余力のある状態で負けようとする。

コツコツ練習し、積み重ねたものを壊されるのを怖いから。だからネスを倒せない。ごめんよ、カービィー。

この本「祐介」には逃げなかった世界が書いてある。
過酷な中、一歩一歩前に向かっていく。
その姿に気持ちが呑み込まれて、めくればめくるほどに身動きができなくなる。そして気がつけば最後のページにたどり着くんだけど、最後は最後でなんとも言えなくて、読み終わると一人突き落とされた気分…。
なんじゃこりゃ、やられっぱなしじゃないか!
みなさま、気をつけて。祐介もコンボが使えます。

金 良要

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