モエと祐介

祐介を読んで、彼女との出会いを思い出した。

ぬけるような白い肌、全てを知っているかのような大きな瞳。
その横に、印象的なほくろが1つ綺麗に記してあった。

「初めまして、雪嘉です」

薄い唇から出たその声は芯のある強い声だった。
求められ続けても満たされない毎日に、その声は居心地が悪そうに頭の奥底で何度もこだましていた。次の行き先を決めているかのような彼女の笑顔が苦手で、よく目をそらしていた。
でも、なぜか目が離せない自分もいた。

好きだけどキライ、そう思ってグラスを眺めた私の隣で嘔吐していた女性は、友人と見られる女性にまるでただの空気かのように見なかったことにされていた。

「友達」その一言にきっと心揺らぐ人がいるのかもしれない。
こんなちっぽけな人間の一言で人生を左右される人もいるこの世の中に、
嫌気もさしたが希望も沸いた。

悪とされる犯罪でも、賛同する人はどこかに存在していて、

友達だと思っていた人に限ってあっさり裏切られたりするし、
むかつくと言える相手ほど愛情を抱いたりする。

誰も信じられない、何がよくて何が悪いの。ただ目の前のまぶしい彼女だけが真実として存在していた恐怖に言葉がついてでた。
「雪嘉の事、好きかわかんない」
いつしか言ったこの言葉にまっすぐと答えた彼女の言葉が今すごく愛しい。

「じゃあこれからなんじゃないかな。分からないって曖昧だけど、同時に存在し得ない好きと好きじゃないっていう2つの気持ちが共存してるんだと思う。好きじゃなかったから好きになれるし、好きだったからこそ好きじゃなくなることがある。全部紙一重。そう思うとさ、全部自分次第じゃない?だから今の言葉、これから好きになるよって解釈するし、萌が自分で出した答えならどんな言葉だっていいよ」

ふと猫の鳴き声で目が覚めた。寝起き顔がうつる鏡を覗いて気づいた、私は口元にほくろがあるってこと。くだらない共通点。
なんだか彼女が好きになれた瞬間だった。

人間らしいということは汚くもあり美しくもある。
どんな感情であっても自分から出たその声に素直でありたい 。
そんな事を思わせてくれた本でした。

荒井 萌

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