ケンタロウと祐介

「自分自身の嫌いなところはなんですか?」
一番嫌いな質問がやってきた。
「思いついた人からどうぞ」
左に座っている二人が即座に手を挙げる。一人目、目をキラキラさせた男子。
「はい、頑固なところです!私は没頭しすると徹底的にこだわりぬきたくなってしまいます。しかし、それを改善する為に……」
第三志望くらいの一次面接。三回に一回ほど聞かれる質問。
自分の嫌いなところって何だろう。聞かれる度に考える。
人見知りなところ。その人見知りを悟られたくないように振る舞うところ。
大雑把なところ。怠惰なところ。優柔不断なところ。きりがない。
二人目、インテリっぽい女子。
「慎重派なところです。私はいつも何か行うときにミスがないように心がけているため、行動が遅くなってしまう時があります。しかし……」
「しかし」に繋げてアピールする為だけのこの質問に、何の意味があるのだろう。自分は何の為に、何と闘っているんだろう。
面接官と一瞬目が合う。自分の番だ。
中途半端で終わった沢山の出来事。なんとなくシカトしたっきりの昔の友人。思い出したくもない恋愛。蓋をしていた記憶が走馬灯のように思い浮かぶ。
「では、最後の方、お願いします。」
「はい、熱中しすぎると、周りが見えなくなるときがあるところです!しかし、最近は日頃から……」

就職活動にまんまとやられ、腐りきっている中『祐介』を読んだ。
祐介も腐っていた。自分のなんてちっぽけに感じるくらい、とてつもなく。
そして腐りながら、歩いていた。
前にではなく、殆ど横や後ろの暴走と迷走だけど、一歩一歩日々を生きていた。

林 健太郎

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