世界観

2016.09.07 /wed IN STORES

Creephyp new ALBUM

LINER NOTES

鹿野 淳(MUSICA)

2000年代の始めに結成され、メンバーから半ば三行半を突きつけられてソロで活動していた時期も短くなかった尾崎世界観とクリープハイプは、そこから約10年間、殆どうだつが上がらなかった。ピンサロ嬢のことを歌っても、ヒモの悲喜交々を綴っても、尾崎世界観の人生を危惧するファン以外には殆ど引っかからず、あっという間に2000年代が終わって行った。

しかし現メンバーが2009年に正式メンバーとなった辺りから風向きが変わる。その後名盤『踊り場から愛を込めて』を2010年代の最初に出し、完全にこのバンドは波に乗った。今までも尾崎は凄まじい名曲を書き続けていたけど、全部が俯き加減なオーラしか放ってなかったのに、このアルバムの楽曲群は横を向いて唾を吐くぐらいの「前向きさ」を持ち合わせ、そのほんの少しの顔の角度で彼らのロックはいきなり伝わった。

そのアルバムリリース直後に事務所へ行ったら偶然ビクターのお偉いさんが来ていて、「うちがいいと言って下さいよ」とその場で頼まれた。そこで僕は初めて、今まで誰も仕事をしたがらなかったバンドが、争奪戦になっていることを知った。当時、うちの部下が尾崎と酒を呑んだ時に、『「セックスしよう!」とか言っとけばみんな喜ぶとか、下らないなあ』と彼がクダを巻いていた話を聞いた。尾崎の心模様はいつでも、竹下通りの奥にある通りよりも「裏腹」だ。何やっても霧中過ぎて、きっともう叶わないと思っていたメジャーやその後のブレイクの光が射して来たことに、夢中になっていたんだと思う。

そしてメジャーへ行った途端、今までが嘘のように誰もがクリープハイプに最優秀ネクストブレイクバンドの称号を与え、実際に彼らは一気に階段を駆け上がった。勢いのまま“社会の窓”でシーンを挑発し、その頃にはもう日焼け止めのタイアップの話が来ていたと思う。ある意味日焼け止めとは真逆の世界をずっと綴って来たバンドだが、見事にそのストーリーにも順応してコンガリとホットな存在となり、そのまま一気に所謂「アリーナバンド」になるかと思いきやーーー「あのこと」が起こった。まるで彼らは日焼け止めを塗るのを忘れたかのように、大火傷をしてしまったのだ。

レーベル移籍である。

ベスト盤がどうのこうの、買うの買わないでくれだの、ボタンの掛け違い(だと未だに筆者は思っているが)により、クリープハイプは被害者加害者呼ばわりされた。彼らは元のレーベル以外にも、ほぼすべての人々に噛み付き、辺り構わず傷つけては倍のパワーで傷ついた。

それでも彼らはトップバンドというポジションからドロップアウトせずに踏ん張った。日焼け止めを覚えた以降のクリープハイプは、頭も身体も随分と柔らかくなり、煮え湯を飲み続けた2000年代には考えられない程、ポップでいるための確かな方程式を手に入れた。しかし一方で、その方程式をポケットの中で握り締めたまま彼らは移籍のゴタゴタで世間を信用出来なくなり、世間も彼らを音楽以外の好奇の視線で観ることが増えた。それでもいい曲を描けば必ず視界は冴えると4人は思っていたし、新しいレーベルのユニバーサルもこんなことになってまで一緒に道を歩むのだから必死だったし、共にメジャーでのブレイク以降の方程式をよりよいものにトレースし直して進んで来た。

ブレイクして以降、けしてここまでの道のりが悪かったわけじゃない。楽曲だって相変わらず見事なものばかりだった。しかしメジャーでの2枚目のアルバム以降の彼らはほぼずっと胃潰瘍に苦しむ人のような表情をしていた気がする。特に前作にあたる3枚目の後はもう、常備薬が必要なほどの状態に取材のときはいつもなっていた。

要するに「実らない、叶わない、煮え切らない」のないないないである。

何で新しいアルバムが出ると言うのに、しかもそれが彼らの中で最も大切な勝負作であると言うのに、こんなグダグダなことをずっと綴り続けたか? それはこのアルバムが、久しぶりに「踏んだり蹴ったり」な中で作られた最高傑作だからだ。

クリープハイプはメジャーに進出して手応えを掴んで以降、「売れるためのアルバム」を目指し、その流れの中で何年も音楽を作り続けていた。なにもこれはバンド稼業として珍しい訳ではなく、一度勝利を収めた者達は、そのレースの上で格闘するものである。

だけど彼らは「珍しい訳ではなく」では駄目だった。何故ならば「珍しいから」である。珍しい声、珍しい歌詞、珍しいルックスバランスの4人。「どうせわかってもらえないし、どうせ日雇いレベルでしか愛してもらえないし、身体だけが目的だし」みたいな堕落した世界観を持っているからこそ、ここまで来れたのだ。言わば彼らは日本の「納豆」であり、フランスやイタリアの「ブルーチーズ」であり、スウェーデンの「シュールストレミング」なのである。人によっては鼻をつまむほど臭くて不味いけれど、それがその国の文化を創り、そして好きな人にはとにかく美味過ぎて、癖を超えた大衆のものになってゆく、そんな存在ーーー。

前述したように、『世界観』は久しぶりにクリープハイプがクリープハイプである理由だけで作り上げたアルバムである。

頭の3曲は彼らなりの王道を感じる、つまりは「世界観」そのもの。その後の4曲目からの4曲分は、ブラックミュージックや洗練されたAORからの影響を感じる、成熟して来たバンドならではのアレンジが光る「新世界観」。シングルの“鬼”からも感じられる黒いソウルの匂いは、このアルバムの鍵を握っている。「何だ、流行ものに手を出したのか」と思うのもいいが、この件は彼ら自身が語ったほうが面白いので、取材をしたり読んだりして欲しい。どちらにせよ、どれだけブラックミュージックのエッセンスを導入しても、尾崎の声で歌い、小泉&長谷川のリズム隊が鳴らせば、それは彼らにしかならないし、ロックのフライパンで調理することになる。ただ、小川のギターが本来持っている粘りとこの新たな音楽の素養はとてもフィットしていることは伝えておきたい。

その後はしばし、「インディー臭かったり」、「カオナシがまたレベルをあげた秀作だったり」、「テレビで最も流れない類いの歌を敢えてテレビサイズの2分半におさめてイライラしたり」な曲を挟んで、後半の3曲はクリープハイプというバンドとしての試行錯誤と尾崎「祐介」の試行錯誤が行ったり来たりする無限スパイラル。そして最後の最後に来る14曲目は“バンド”というタイトル。ここで尾崎は、2009年11月16日に下北沢CLUB QUEのライヴで小川、小泉、長谷川を正式メンバーとして発表した(それまではサポートメンバー)以降のクリープハイプが「納豆」である所以を見事に歌い切り、しかも最高に意地悪な手紙のような歌詞を3人に寄せている。純粋過ぎて、愛に飢え過ぎて、自虐を極み過ぎて、歪みまくった内的世界を彼らはこの曲で見事に響かせ、アルバムは終わる。

強引にまとめたけど、一言で言うなら支離滅裂なアルバムだ。しかしそれが、それこそがクリープハイプである。彼らの長い歴史は停滞と混沌とトラブルと自傷にまみれているが、それを引き出しに整理するとクリープハイプではなくなる。何故ならば彼らは整理出来ないからこそ音楽にして来たし、整理出来ないからこそバンドを選んだし、整理出来ないからこそイライラしているし、整理出来ないからこそ嘘がつけずに歌にして来たバンドだからだ。計算より衝動、というより計算が出来ないからこそ、結果、衝動ばかり味わってここまで来たバンドが、頭よくなることを放棄して久しぶりに「あーもう!」と踏んだり蹴ったりした音を投げつけるだけのアルバムを作ったのだ。

昔に戻ったわけでもないし、戻りたくもないし、随分といろいろなことを味わった。そんな今の彼らがやっぱり踏んだり蹴ったりしか出来ないことに気付いて作った『世界観』。

このアルバムとなら、一発ヤリたい。

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初回限定盤CD and DVD

¥3,700(税抜)三方背トールケース仕様

DVD収録内容

短編映画「ゆーことぴあ」
ミュージックビデオ「鬼」
メイキング映像「ゆーことぴあ」「鬼」

通常盤CD

¥2,750(税抜)

TRACK LIST

  • 破花「代々木ゼミナール」CMソング
  • アイニーNHKアニメ「境界のRINNE」オープニングテーマ
  • 僕は君の答えになりたいな
  • 日本テレビ系日曜ドラマ「そして、誰もいなくなった」主題歌
  • TRUE LOVE
  • 5%
  • けだものだもの
  • キャンバスライフ
  • テレビサイズ(TV Size 2’30)
  • 誰かが吐いた唾が キラキラ輝いてる
  • 愛の点滅全国東宝系 映画「脳内ポイズンベリー」主題歌
  • リバーシブルー明星「一平ちゃん 夜店の焼きそば」CMソング
  • バンド

チェーン別の購入者特典も決定!

タワーレコード

  • 【先着特典】謎の「世界館」プレミアムチケット
  • 【応募特典】全国ツアー「熱闘世界観」バックステージご招待

TSUTAYA

  • 【先着特典】缶バッチ(2個セット)
  • 【応募特典】クリープハイプ×ツタロック スペシャル・イベント(仮)100組200名様ご招待

その他店舗

  • 【先着特典】告知ポスター
  • ※特典は無くなり次第終了となります。
  • ※一部お取扱いの無い店舗もございます。
  • ※TSUTAYAオンラインショッピングは、ご予約分のみが対象です。

アルバム初回封入特典:全国ツアー”熱闘世界観”11月公演分におけるツアーチケット先行抽選受付シリアルナンバー封入。
[封入特典受付期間:2016年9月6日(火)19:00~9月11日(日)23:00まで]

クリープハイプ - 4th ALBUM
「世界観」全曲トレーラー映像

MUSIC VIDEO

破花

リバーシブルー

愛の点滅